アンリ・シバの旅日記

列車で巡る南ドイツの旅(バイエルン地方)

南ドイツ旅行・珍道中記

第9日目 4/16(水) ミュンヘン → ハイデルベルク

今日は午前中はミュンヘンで買い物をし、午後最後の訪問地ハイデルベルクへ向かう。各人により買いたい物が異なるので個人行動にして正午に新市庁舎前に集合するようにした。

 ダルマイヤーの前までは全員で行った。H子さんはダルマイヤーでお土産を買いたいと言うので私たちはダルマイヤーに入ることにした。Kさん夫妻はクロイツカムに行きたいが場所が分からないと言うので途中まで案内した。Kさんの妹S夫人とY夫人は自分たちだけでは右も左も分からないので歩けない。兄と一緒に行動するのかと思ったら私たちと一緒に付いて廻って良いかと言って私達と一緒に買い物をすることになった。

 ダルマイヤーの1階での買い物が終わって、2階に上がった。高価な食器類が並べてあるので万引きをしたり、こわしたりしないか屈強なおっさんが目を光らしている。リュックを背負い直すために1階で買った物の袋をベンチに置いたら飛んできて「売り物の上に物を置くな」と言う。「あんたの所で買った物で軽い物だ」と言っても「ベンチは売り物だからダメだ」と言う。小さな袋を置いたくらいで文句を言う、もしあのベンチに座ったらなんて言っただろう。H子さんが鶏が付いたエッグスタンドを一つ買った。ギフトかと聞くので自分の物だと言ったがギフト用のように綺麗に包装してくれる。ギフト用だとどのような包装をしてくれたのかと思った。包装しているカウンターの上にダルマイヤーで取り扱っているテーブルウエアーの冊子があった。見ているだけで眼の保養になるような物が載っている。無料かと聞くと無料だと言い、3人女性が居るのを確かめて2種類の冊子を3部くれた。


ダルマイヤー2階のブティック


ダルマイヤー テーブルウェアーの冊子


ダルマイヤーのテーブルウエアーの一つ

 S夫人が隣の宝飾店のショーウインドウに飾ってあった宝石入れの卵を買いたいと言うのでそこに行った。宝飾店だけあって中には女性が好きそうなものがたくさん陳列されている。ショーウインドウにあるような卵が欲しいと言うと、いろんな模様が描かれた卵を出してきた。目移りがしてどれが良いか分からなくなってくる。S夫人だけでなくH子さんもいくつか買った。

 ここへ来たとか、この店に来たという証拠の写真を撮りながら、他にめぼしい物がないかあちこちの店先を覗き、ぶらぶら散策した。どこか行ってみたい店はないか女性達に訊いたが特にないと言う。集合時刻までにはまだ時間があるので、土産にできる民芸品が豊富にある店として「マックス・クルーク」がガイドブックに載っていたので行ってみた。ビアジョッキや木工品など一見してドイツの土産品だと分かるものがぎっしり所狭しと置かれている。私は何も買っていなかったのでアカイヌ山荘の棚に飾る木工の小さな“クルミ割り人形”を買った。H子さんも友達用に同じような人形を買っていた。入り口近くに高さが1m位のピノキオの人形が置かれていた。S夫人は友達にピノキオの人形があったら買ってきて欲しいと頼まれていた。持ち運ぶのには少し大きい、半分くらいの大きさの物はないか尋ねると有ると言って倉庫に探しに行ってくれたが無かった。持ち運びに大変だが店先にあった物を買った、値段が少し張るので免税の書類を作ってくれた。Y夫人は何も買わないので買う物は無いのか尋ねると、今までに買ったものでスーツケースは一杯で重く、これ以上買っても持つことが出来ないと言う。そう言えばホーエンシュバンガウで昼食後S夫人と一緒に買い物に行った。相当重い物を買ったに違いない。「どんな物を買ったか帰国してから開けてみないと分からない」と言うほど一度にいろんな物を買ったようである。


宝飾店のショーウインドー


ペルサス通りで、後ろに見えるのがバイエルン州立歌劇場


民芸品・土産物が沢山並ぶ「マックス・クルーク」の店内で


買い物も済ませ待ち合わせのマリエン広場に向かう道路に
並べられていた花  (カウフィンガー通り)

 正午近くなったので市庁舎前へと急いだ。Kさん夫妻はもう来ていた。クロイツカムで買い物をした後、一昨日行ったフラウエン教会にもう一度行って見たと言っていた。クロイツカムを出てどこへ行こうか、近くで行けそうな所を地図と磁石で調べていた。それがトラムの軌道の中で地図を見るのに熱中していて気が付いたら目の前にトラムが止まっていた。デブッチョの女性運転手が警笛も鳴らさず、軌道から出ていくのをニヤニヤしながら待っていたとのことである。他の通行人も注意をしてくれなかったと言っていたが、地図を見るのに熱中していて声を掛けてくれたのに気が付かなかったと思う。ドイツでは事故に遭ったとき、責任は0%か100%のどちらかだそうだ。横断歩道でない所で車にはねられたとき、日本では前方不注意として車の運転手にも責任が課せられるが、ドイツでは歩行者が全面的に悪く車の運転手には責任は全然無いということである。もし、Kさんがトラムにはねられていたら、トラムの運転手には責任はまったく無くKさんのはねられ損で損害賠償金などは出ないという。かといって、ドイツ人は相手が悪いのだからと無茶なことはしない。訴訟になったときどちらが悪いのかで責任が0%か100%であると言うことである。

 昼食は市庁舎前のマリエン広場の脇にある「ドニズル」というレストランに行った。この店は200年以上もの歴史があり、バイエルン地方の郷土料理をサービスし、メニューは写真入りで分かりやすく、日本語のメニューもあって安心だとガイドブックに書いてあった。

 ドニズルへ行くとオープンエアのテラス席は客で一杯。建物の中に入っても良いのだが外のテラス席の方が気持ちが良い。6人が座れる席を確保するのが大変だ。食べ終わった客が席を立つのを見て素早くテーブルを確保し、他のテーブルで余っている椅子をかき集める。日本語のメニューを貰いに建物の中の受付に行った。英語のメニューを出すので日本語のメニューが欲しいと言うと、今出すから慌てるなと言って英語と日本語の両方のメニューをくれた。ボイルした白ソーセージを食べたかったので、注文するものを決めデブッチョ(運転手も車掌もウエトレイもデブッチョが多い)のウエイトレスを呼ぶが1人で受け持っているテーブルが多いのでなかなか来ない。やっと来た、注文すると注文した品は冷やしたものにするのか暖かいものにするのか調理方法を聞く。ボイルした白ソーセージを注文しているのだから暖かい物に決まっている。おかしい、メニューをよく見ると注文するものを間違えている。日本語のメニューを見てその品をドイツ語のメニューで指差したとき別の物を指したらしい。オーダーしたのは誰だ。

 陶器で出来た壺に入った白ソーセージが運ばれて来たが数が少ない、追加注文をした。どこのレストランでも食べ物にありつけるまでに時間がかかる。Kさんはみんなの面倒を見てやろうという気持ちでどんどん進めてくれて有難いがやっていることが、少しずつづれていてトラブルが起こることもある。S夫人が包んでいる腸をはずして食べていると、「腸は食べれるのだからそれも一緒に食べないと意味がない」とKさんが言っている。「外人が食べているのを見ても腸をはずしている」とS夫人が言うと、「あれは食べ方を知らないんだ」と言っている。「腸の繊維が歯に挟まるので食べたくない、食べ方についてまでいちいち言ってくれなくてもいい」とS夫人がこぼしていた。


マリエン広場左の市庁舎の脇にあるバイエルン地方の郷土料理店
「ドニズル」のテラス席で、名物の太い白ソーセージを食べた


白ソーセージは鮮度が重要なので午前中に食べるのがおすすめ。
(皮を残して、中身だけ食べる)


 S夫人が持っている免税の書類をKさんが見て、俺がクロイツカムで貰ったのと書式が違う、免税の書類はどの店で貰っても同じはずだ。一見してS夫人の書類の方が正式なものに見える。俺のでは税金が返ってこないかも知れない、もう一度クロイツカムに行って書類を作り直して貰う。こみあった話になるのでH子さんに一緒に行って貰った方がいいということでみんなで行った。結局は前に作って貰った書類でも良いことが分かった。



 荷物を取りにホテルに帰り、中央駅でザルツブルクから来た国際列車に乗り最後の訪問地ハイデルベルクへ向かった。最初に乗り込んだ車両は昔の日本にもあった天井が丸く半円になっていて、照明は蛍光灯ではなく電球に丸いカバーがついた電灯である。椅子は横3列で余裕があり、足を置く台も付いている。私たちチビで足の短い日本人には良い客車だが冷房が入っていないのか暑い。隣の車両に行って見るとコンパートメントになっている。3部屋空いている。空調も部屋毎出来るし横になって寝ることも出来る。H子さんはこの古風な車輌が気に入っていたが、コンパートメントの車両に移った。  Kさんは膝を痛めており、疲れている様子であったので寝て行ってもらおうと1室はKさん夫妻で使って貰った。S夫人、Y夫人はミュンヘンでの買い物同様私たちと一緒に同じ部屋で過ごした。列車は Augsburg(アウクスブルク)、Ulm(ウルム)、Stuttgart(シュトゥットガルト)を経由してハイデルベルクへと走る。5日目のローテンブルクからホーエンシュバンガウへ向かう途中、歌にも歌われているドナウ川を渡ったはずだが、あの時は列車が遅れていてドナウ川を探している状況ではなかった。今度はウルムでドナウ川を渡るはずである。今度は見ようと思っていたが話に夢中になっていて、またしてもドナウ川を見損なった。国際特急列車は速度が速い、ドナウ川も一瞬に渡ってしまうのでどれがドナウ川か探しているうちに通りすぎたのだろう。ミュンヘンを発って2時間少しでシュトゥットガルトに着いた。中央駅は沢山のホームがある。他のホームにいる乗客はみんなTシャツ姿である。外は相当暑いのだろう。例年であればこの時季のドイツは寒いと聞いていたが今回の旅行は天候には本当に恵まれている。

 ここがあのシュトゥットガルトかと感慨深く思った。と言うのは若い頃バイオリンの音色が好きで、ヴィヴァルディ、コレルリ、バッハ、ヘンデルなどの弦楽合奏曲のバロック音楽をよく聴いた。カール・ミュンヒンガー指揮のシュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏は歯切れが良く特に気に入っていてレコードも何枚か持っている。そのシュトゥットガルト室内管弦楽団の本拠地である街に今居るんだと。

 シュトゥットガルトを後にして列車はハイデルベルクへと動き出した。今までは最後尾の車両であったが向きが変わり、今度は最前列の車両で機関車のすぐ後ろである。発車して間もなく今まで走ってきた以上にスピードをあげて走り出した。地図を出して見るとシュトゥットガルトからハイデルベルクの手前まで新しく直線の鉄道が出来ている。その線路に入ったのだろう。コンパートメントのドアを開けて通路に出ると機関車が凄い轟音を出して走っている。日本の新幹線はスピートを出して走っていてもスピード感は感じないが、この機関車の音を聞いていると”あぁ、列車に乗っているんだ”と感ずる。昼寝をしている間もなく1時間半足らずでハイデルベルクに着いた。


シュトゥットガルト付近


シュトゥットガルト駅のホーム

 Kさんが青色でなく赤色のインホメーションは何処かと言って探す。赤色のインホーメンションではホテルの送迎の車でも頼めるのかと思ったらそうではなくホテルの場所と行き方を聞いただけであった。歩くには少し距離もあり、重い荷物もあるのでタクシーで行かなければならない。私は中央駅の近くか、旧市内のど真ん中のホテルが便利で良いと言って、街を見物するのに便利な旧市内で16世紀の歴史的建築物がホテルになっているツム・リッターを希望したが、古いホテルは水回りなどの設備がどうなっているか少し心配だったので、結局は駅と旧市内の中間にあるKさん希望のクラウン・プラザに決めていた。

 インホメーションで市内観光地図を売っていたので手に入れ、タクシーでホテルへ向かった。ホテルに着きチェックインし、部屋へ入るとテレビ画面に Welcome to the CROWNE PLAZA HEIDELBERG Mr./Mrs. UE ‐‐‐‐ と歓迎の映像が映っていた。続いて pm.600に開く私たちのレストラン(ウエストコースト・カリホニアン・スペッシャリティーズ)でエンジョイしてください。席を予約して頂けば大変うれしいですという宣伝も書いてあった。部屋にはコーヒー、紅茶、緑茶のティーバックと電気ポットなどがあり日本のホテルのようである。バスタブも日本人の身体に合った大きさである。夕食は外のレストランに行って見ようとKさんとH子さんが探しに行ったが駅前でもなく、旧市内でもない中途半端な場所なのでレストランはない。仕方なくホテルのレストランで夕食を取ることにした。

 ホテル宣伝のテレビ画面には席の予約を…と書いて有ったので混雑しているのかと思ったら客は私たちだけであった。若いウエイトレスがメニューを持ってきた。「シェフのお薦め料理」とか「本日のスペッシャル料理」は何か訊いたが、メニューに書いてある料理だけで「今日の特別な料理」というのはないという説明が出来ずメニューを指差すだけである。英語があまり出来ないようであった。魚料理でお薦めはどれか訊くと肉料理が良いと言う。なぜ肉料理を薦めるのか訊くと私は魚は食べないからと自分の好みで客に薦める。量はどれくらいあるのか訊いても答えられないので適当に料理を選び1人分の料理を半分ずつ2つの皿に盛ってくれるよう頼む。シェフは2つに分けて綺麗に盛り付けしてくれたが、Kさんが頼んだ料理は2つに分けて盛り付け出来ないので自分たちで分けて食べてくれと言った。持ってきた料理を見ると確かにシェフが分けるには困難な料理であった。食後、アンケート用紙を持って来て書いてくれという。よく見ると前の人が書き込んだ用紙である。これは使用済みの用紙だから新しい用紙を持って来るように言うが通じない。少し年取ったウエイトレスに言うと用紙を見てビックリして新しい用紙を持って来た。若いウエイトレスには、もう少し教育してからでなければ客の前には出さない方が良い、と言おうとしたがいらぬお節介だと思いやめた。


ホテル「クラウン プラザ ハイデルベルク」


ホテルの部屋に入るとテレビ画面に歓迎のことばとレストランの宣伝が出ていた

ドイツ旅行 一口メモ

ツーリストカード

 観光客のよく訪れる比較的規模の大きい都市では、ツーリストカードを発行していることが多い。これは、市内交通が無料になったり、博物館などの見どころに無料あるいは割引料金で入れる。期間も1日から1週間までいろいろある。いちいち切符を買う手間が省けて財布を出す回数も減るので、安全面からも使用するメリットが大きい、がシニアだと見学場所の入場料がシニア料金で入れるのでどちらが得か計算してから買おう。駅前か市内にあるインホメーションで扱っていて、都市によりいろいろ呼び名があるがツーリストカードで通じる。

フランクフルト → フランクフルトカード
ミュンヘン   → ミュンヘン・ウエルカムカード
ハイデルベルク → ハイデルベルクカード