アンリ・シバの旅日記

列車で巡る南ドイツの旅(バイエルン地方)

南ドイツ旅行・珍道中記

第7日目 4/14(月) ミュンヘン

朝食を食べに食堂へ行った。受付で部屋番号が書かれた鍵の袋を見せる。Smoking か No smoking か聞かれる。Smoking と言うと奥の隔離されたコーナーの席に案内された、ここでもアメリカンスタイルで喫煙、禁煙を分離している。席に着くと紅茶かコーヒーかどちらを飲むのか聞かれ、コーヒーと言うとコーヒーをポットに入れて持ってきて呉れた。今までのホテルと同様にビュッフェ形式であるが大きなホテルなので食べ物の品数が多い。パンの種類、ジュースの種類だけでも今までのホテルと違い種類が多い。しかしチェックインのとき、受付嬢が食事は Conti.(continental breakfast)だと何回も念を押して鍵の袋にも Conti. と書いた。Conti. だとコーヒーとパン、それにハムとサラダくらいのごく簡単な軽食だと思っていたので、ウェートレスが運んで来るものと待っていたら自由に食べたい物を取ってきて食べて良いと言う。これでは一般の客と同じだ、少し得をした思いであるが食べ過ぎるとすぐお腹をこわすので我慢していつも家で食べているような軽食にした。ビジネス客が多く、それぞれ新聞や書類を見ながら食事をしていた。みんな身体も大きく、働き盛りの人たちで食べる量の多さにビックリした。食事後 Herren(トイレ)に寄り、コンシェルジュに立ち寄ってトラムの駅などが載っているミュンヘン市内の地図を仕入れた。

 今日は午前は郊外にあるニンフェンブルク城、午後は市内の建物をいくつか観る予定で出かけた。ホテルの前のローゼンハイマー・プラッツ駅からSバーンで中央駅まで行き、そこでトラム N17 に乗り換えてニンフェンブルク城へ。Sバーンはジャーマンレールパスを持っているのでキップを買う必要はないが、トラムのキップは自動券売機で買わなければならない。券売機でニンフェンブルク城までいくらか調べているうちにトラムが来た。トラムの中で買うことにして乗り込み運転手にいくらか訊いた。デブッチョの女性運転手が「何から乗り換えたか」と聞く、「Sバーンから乗り換えた」と言うと「乗車券はいらない」と言う、ドイツの乗り物の料金体系はどうなっているのかサッパリ分からない、日本では会社が違えばそれぞれキップを買わなければいけないのに。まあキップは要らないと言うので気分良く乗っていたが、下車駅を間違えないようにしなければならない。Schloss Nymphenburg の表示が出たら下車するようにみんなに言っておく、前にも書いたがドイツでは駅に着く直前にしか知らせて呉れない、日本では前の駅を発車すると次は何々と言ってくれるし、最近作られた電車は漢字、カタカナ、ローマ字で次に止まる駅を表示してくれる。後で分かったのだがミュンヘンでは乗り物の料金はSバーンとUバーンはトラム(路面電車)、バスと共にミュンヘンとその近郊(約40km)を、距離によって定められていて、1枚の乗車券で乗り継ぐことができる共通料金システムをとっているそうである。

 ニュンフェンブルク城はバイエルン選帝候や国王の夏の離宮だったバロック式の城館である。選帝候フェルディナント・マリアの命により、1664年に建設が始まり、いちばん最初に中央の館が建てられ、その後、何度となく拡張工事が行われ現在の姿になった。広大な敷地を持つ宮殿でメイン宮殿の正面側と裏側に宮殿を貫くように、それぞれ2,000mを越える直線の水路があり、水路にはいろいろな噴水・大階段滝などがある。水路の両側は並木道になっている。メイン宮殿の裏側は大きなフランス式庭園と森になっていて森の中のあちらこちらに大きな池もある。森の中にはいろいろな建物・施設が散在しており一日では見ることが出来ない。水路にも池にも白鳥を始めいろんな種類の水鳥が泳ぎ、また羽根を休めている。食べ物を見せると集まってきて我先に水路から這い上がって来る。中には渡り鳥もいるがほとんどの鳥の足に輪がついているのでこの館で飼っているのだろう。これだけの数がいれば餌代も相当かかる。宮殿に向かう途中、芝生で休んでいる白鳥をからかってやろうと近づくと威嚇して怒る「昼寝をしているのに邪魔をするな」と言っているようだった。


ニンフェンブルク城 宮殿全景


ニンフェンブルク城宮殿正面


からかったら怒って逃げた白鳥

 私たちはメイン宮殿と森の中にある4つの建物を見学することにして1階のチケット売り場でいつものようにシニア券を買った。入場券は一枚の用紙に見学する施設の名称が印刷されており、それぞれの場所で入場するとき手で破り切り目を入れるようになっていた。メイン宮殿の入り口は一度外に出て螺旋階段を上がり2階から入るようになっている。入り口の受付で説明書を売っていて、ドイツ語・英語・フランス語・イタリア語などのものが並んでいる。「日本語のものがないね」と言っていたら、「日本語のものもあるよ」と言って戸棚から出してきた。文句を言った手前、買うことになった。

 入り口を入った最初の部屋が白と金色と淡い緑に彩られた祝宴の間で、壁と天井のフレスコ画が素晴らしい大ホールである。夏はここでコンサートがよく開かれるとのことである。祝宴の間を中心に北側と南側に対称に部屋が配置され、第1控え室,第2控え室、寝室、ワッペン(紋章)の部屋、中国の漆塗りキャビネット、木目の部屋、ブルーサロンなど公開されている部屋が20部屋有った。それぞれの部屋によって内装に特徴が有ったが、どの部屋がどうなっていたか忘れてしまった。ガイドブックで紹介されていた王ルートヴィヒ一世の美人ギャラリーの部屋も覗いて観た。ここはもと小食堂で四方の壁に所狭しと36枚の美人画が飾られていた。ここに描かれている女性は、北側の歩廊にあった選帝候マックス・エマヌエルの美のギャラリーの女性画と異なり、宮廷の女性とは限らず、靴職人の娘、スペインの踊り子などさまざまな社会階級の出身者たちである。美人画ギャラリーが有名だと聞いていたので、喜多川歌麿の美人画を予想していた人もいたらしいが、悩ましい格好をした絵は1枚もなくすべて上半身の肖像画であった。


メイン宮殿 祝祭の間


メイン宮殿 祝祭の間の天井画


メイン宮殿 美人画ギャラリー

 外に出て「王室馬屋博物館」へ行こうとしたが案内の標識がない。庭園内の図を広げて場所を調べた。私が図の見方を間違えたために反対の方へ行ってしまった。どこまで行ってもそれらしい建物がない、また図を取り出し調べ直した。間違っていたことに気づいた。今来た道を引き返し反対の方へ行った。庭園は広いので方向を間違えると歩く距離も多く無駄な時間を費やすことになる。もし上から見ていた鳥がいたら、あの6人組はあっちへ行ったり、こっちへ行ったり何をしているのだろう、不思議な行動をしている連中だ、と思っただろう。

 「王室馬屋博物館」は旧厩舎で、馬車や馬そりのコレクションが展示されていた。壮麗な馬車、馬そり、馬具類、鞍具などがあり、かってのヴィッテルスバッハ家の栄華が偲ばれるものばかりであった。なかでも、ルートヴィッヒ二世が祭礼のとき使用した馬車はいままで見たこともない豪華なもので、金色に塗られた彫刻が組合わさって作られた物で車輪まで金色の彫刻で出来ており、これ以上飾る所がないほど華麗な装飾が施されていた。「写真を撮ってもいいか」と訊くと、「No flash なら良い」と言う。前にも書いたと思うが、ドイツでは博物館でも美術館でも No flash なら写真撮影が許可される。写真を撮ろうとするが画面にうまく収まらない、シャッターを押したところで監視のおっさんがとんできた。慣れないカメラなのでフラッシュが光ったらしい。怒られると思った、体格が大きいので傍に来られると驚異を感ずる。「No flash にしたはずだ」と言うと「今は他の客はいないし、見ていないことにするから撮って良い」と言って行ってしまった。この建物の係員は4人くらい居たが日本人には友好的で中には片言の日本語で歓迎してくれた。またチケットに書かれている次に見る建物の場所を訊くと、外に出て丁寧に教えてくれた。


ニンフェンベルク城内 王室馬屋博物館(旧王室厩舎)入り口


王室厩舎内に保存されている馬車


王室馬屋博物館の外壁に並んでいるレリーフ


金で装飾された馬車の一つ

 庭園内には別邸(小宮殿)がいくつか散らばってあるが、アマーリエンブルク、バーデンブルク、マグダレーネンクラウゼを見た。建物と建物の間は500m から1,000m離れていたが、天気はよく、小鳥のさえずりを聞きながらの広い庭園(花壇や林)の散策は飽きることはない、一日中いても良い所である。ずいぶん歩いたように感じたが私たちが歩いた範囲は庭園の1/3にも満たない。こんなに広く、綺麗に整備された場所が無料で解放されていて市民がくつろいでいる姿を見てミュンヘン市民を羨ましく思った。

 アマーリエンブルクは狩猟用の宮殿で最も完璧なロココ様式の建築物で、鏡の間、台所、犬小屋は一見の価値があるとガイドブックに書かれていた。建物に入る前に犬小屋がどこにあるのか探したが見つからなかった。最初に入った部屋の天井と壁には花や果物を使った絵が描かれ、ドアの上部には山鹿ときつね狩りの様子が描かれた広間であった。飾り羽目板の広間の周りに犬が一頭ずつ入れる小屋がはめ込まれている。これが犬小屋かと驚いた、狩りから帰ってきたらそれぞれ自分の小屋に入って寝ただろう。犬小屋ではなく犬部屋である、お犬様も立派な部屋に住んで居たのだ。鏡の間は円形状になっている部屋で全体は青地で壁面の鏡の枠と窓枠は銀の彫刻であしらわれていた。テーブルや椅子は貝を使った装飾で銀で縁取られていた。「銀の間」といってもいいと思った。台所は陶製タイルで化粧されていて、タイル画は中国風であった。タイルはオランダ製だそうだ。

 バーデンブルクは水泳のための小宮殿である。建物の前面は両側が林で真ん中は芝生に覆われた庭が何処までも続いていてゴルフコースのフェアウエィの様である。階段を上って中に入るとほぼ楕円形をした祝賀の間があり奥に控えの間、寝室がある。地階は厨房、暖房室、吹き抜けのプール、浴室などがある。プールは豪華で結構大きい、当時としては室内にこれほどのプールを作るのは珍しい事であっただろう。外は広く水路も池もあるのでそこで泳げば良いと思うのだが周りを豪華に飾らないと気が済まなかったに違いない。

 水路をはさんで反対側にパゴーデンブルクがあるがそちらを回ると2,000m歩かなければならない。昼近くで時間がないので省略し、マグダレーネンクラウゼの方へ行った。マグダレーネンクラウゼは外観は人工的な廃墟で内部は質素な居住空間になっている。宮廷の豪華なセレモニーから孤独な宗教的、あるいは哲学的な思いに耽るための逃避の場所、また静かに自然をたしなむ場所だったそうで、意識して作った廃墟のような外観は隠者の半分崩れかかった家屋をまねている。今まで見た建物に比べあまりにもみすぼらしい外観なので、外側は空襲で破壊されたままになっているのかと思ったほどである。玄関ホールと礼拝堂は洞窟のように造られている。控えの間、食堂とベッドの部屋、キャビネッ(図書室)、祈りの部屋を見るには靴を履いたまま履ける大きなスリッパを履いて入る。床が滑るので少しずつしか移動出来ない。まるで床の拭き掃除をしているみたいである。見学が終わって帰るとき、H子さんが係りのおっさんに「しっかり拭き掃除をしてきました」と言ったらおっさんは笑っていた。


ニンフェンブルク城 アマーリエンブルク (狩猟用小宮殿)


アマーリエンブルク 猟犬の間
猟犬はそれぞれ下のボックスで寝る


アマーリエンブルク 鏡の間


アマーリエンブルク タイル張りの厨房


ニンフェンブルク城 バーデンブルク(水泳のための小宮殿)



バーデンブルク 寝室


バーデンブルク 祝祭の間


バーデンブルク プール


ニンフェンブルク城 マグダレーネンクラウゼ


泉の中のマグダレーナ像


マグダレーネンクラウゼ 礼拝堂天井


洞窟ホールの天井



 お腹も空き、喉も渇いていたのでマグダレーネンクラウゼに行く途中に見えていたレストランに急いだ。水路の両脇に連なっている芝にドイツ語で書いてある立て看板が有ったが意味が分からない。”芝生には入らないように”という意味かと思い、Kさんが歩いてきた若い男に聞くと”鳥には食べ物をやらないように”と書いてあるということであった。レストランのテラス席はビールの大ジョッキを持った客で一杯だ。どこでも見かけるが外国人は外の席でビールを飲むのが好きらしい。メニューを見ても分からないので、隣の席の人が食べていたものと同じ物を注文し、ビールは飲めないのでジュースを飲んだ。  喉も潤しやっと一息つき、昼食も食べ終わりミュンヘンの中心街へ帰るため荷物を預けたメイン宮殿へぶらぶら歩いた。木陰にはベンチが沢山並んで置いてあり、そこで読書している人、目をつむって空想に耽っている人、横になって昼寝をしている人、彼女の膝枕で横になっている男、親子でお菓子を食べながらお喋りしている人、テレビの画面でよく見る外国人がくつろいでいる光景が目の前にあった。駐車場で幼児を連れてきたお母さん連れに会った。双子を連れてきたお母さんは車から2人乗りの乳母車を降ろし並んで座らせた、可愛い女の子である。これから庭園の中で森林浴、日光浴をさせるのだろう。空気もいいし、きっと健康に育つだろうと思った。

 トラムでミュンヘン中央駅まで帰り、中央駅から1つ目のカールス・プラッツ駅で下り、ミュンヘンで一番賑やかな通りと思われるノイハウザー通りをカールス広場からマリエン広場まで歩いた。広い通りは歩行者天国になっていて車は入ってこない。カールス門をくぐると新宿の人混みのように、通り狭しと沢山の買い物客や観光客で埋まっている。通りの両側にはデパート、専門店、レストランなどが建ち並び、通りには花屋、果物屋、白アスパラなど旬の野菜を売る屋台などが並んでいる。

 反宗教改革の一環として建てられたルネッサンス式カトリック教会の聖ミヒャエル教会に入った。大理石の正門の間には、この世の悪と闘う天使長ミヒャエルのブロンズ像がある。礼拝堂は素晴らしい彫刻が施されている。中央祭壇の下にある地下室には選帝候マクシミリアンやルートヴィッヒ二世を含むヴィッテルバッハ家の30人が葬られていて名前、生存した年代が書かれた棺が並んでいた。地下室に入るには2ユーロ必要と書いてあり、階段を下りていくと係員がいた。「シニア料金はないか」と聞くと黙って2ユーロと書かれた料金表を指差した。ルートヴィッヒ二世の棺はひときわ大きく一番立派で中央に置かれ、花も飾られていて特別扱いであった。傍らに小さい簡単な棺があったので、これは子どもの棺かなと思って棺に書かれた年代を見ると年寄りの人の棺であった。生まれて1年以内で死亡した子供もおり、立派な棺に納められていた、親としては早死にした子を不憫に思い、せめて棺だけでも立派にしてやったのだろう。

 入り口の道路に立派な猪の銅像があるドイツ狩猟・漁猟博物館は通り過ぎて、フラウエン(聖母)教会に行った。1468年に建てられた南バイエルン教会圏の主教会でさすがに大きな建物である。タマネギ型の屋根の2つの塔は高くのびていてミュンヘンの街のどこからでも見えるランドマークになっている。内部は過剰な装飾を排除した造りになっていた。ステンドグラスはキリスト受難劇を説明したものであり、祭壇画も沢山あったが特に”マリアの昇天”は一見の価値があった。


カールス門


聖ミヒャエル教会


聖ミヒャエル教会 悪と闘う大天使ミヒャエル像


聖ミヒャエル教会の地下にあるルートヴィッビⅡ世の棺


フラウエン(聖母)教会の塔 ネギ坊主の円筒で高さは左が99m、右が100m


聖母教会の中央身廊祭壇


フラウエン(聖母)教会内の絵画


聖母教会のステンドグラス

 フラウエン教会を後にして、果物屋や八百屋の屋台の露店を冷やかしながら新市庁舎前のマリエン広場に行った。丁度5時前だったので沢山の人が集まっていた。新市庁舎正面にはバイエルン王、寓話や伝説の英雄、聖人などの像が飾られていた。いつでも人が沢山集まるこのマリエン広場に、5時に一段と多くの観光客が集まるのには理由がある。市庁舎は高さ85mの巨大な塔を持ち、その塔にある仕掛け時計は5時の鐘(時報)と共に人間の大きさとほぼ同じ32体の人形が歴史劇を繰り広げる。2段になっていて上の段は侯爵の結婚式、騎士の馬上試合の様子、下の段は桶職人の踊りが、ゆっくり回りながら10分間にわたって演じられる。片方の馬上の騎士が槍で突かれてのけぞって倒れると観衆からワァ~ァと歓声が上がる。


猪の像があるドイツ狩猟・漁猟博物館前


旬の太い白アスパラなどを観察(カウフィンガー通りの露店で)


ミュンヘン新市庁舎と聖母教会


ミュンヘン新市庁舎にある英雄・聖人などの像
ミュンヘン新市庁舎の塔にある仕掛け時計

 マリエン広場の近くにあるヴィクトアリエン市場に行った。市民の胃袋を支え続けているミュンヘン最大の露店市場だ。色とりどりの野菜や果物、オレンジと言っても数種類あるのには驚いた、見た目には同じように見えるが種類が違うらしい。真っ赤なパプリカ、チーズやワイン、ハムやソーセイジ、魚介類などさまざまな食材が売られていてこれらがまた安い。リンゴ、オレンジ、バナナも必要なだけ1個でも量って売ってくれる。ビヤガーデンもあり、簡単な飲食も出来るようになっている。市場を見るのは地元の生活を知る貴重な場所であり、買い物をしなくても食材を見るだけでも楽しい。

 夕食はKさんがガイドブックに載っていた豚の名物料理店「ハクセンバウアー」へ行って見たいというので行って見ることにした。地図を見るとその店はマリエン広場の近くにある、市場から近道をして行ったために思ったより近かったので行き過ぎてしまい道に迷った。プラッツェルホテルのボーイが玄関前にいたので場所を訊いた。ボーイは日本人が寿司屋を探しているものだと最初から思いこみ、寿司屋はこちらだと連れて行こうとする。「寿司屋ではなく、ハクセンバウアーだ」と何回言っても通じない。ドイツ語で書いてあれば見せるのだが、ガイドブックにはカタカナでしか書いてないのでカタカナの日本語読みで言っても通じない。近くに三越が書いてあるので三越にはどう行けば良いかを訊くと、ホテルの1ブロック反対側にある三越まで連れて行ってくれた。自分の勤務する場所を離れ、ホテルの仕事をほったらかしにして良いのかと思った。あまりにも親切だったのでチップを渡したら、ホテルの名の入ったボールペンを2本くれた。

 三越のミュンヘン支店があまりの小さゝにビックリ。デパートなので3階か4階建てのビルに入っているものだと思っていたら、小さな専門店やレストランが並んでいる一郭にあり、個人が経営している小さな専門店のような店であった。店員は1人しかいなく、本当に三越かと訊くとそうだと言う。今地下に団体客が来ていると言っていたが、ヨーロッパのブランド品やドイツの土産物を日本の団体客だけに売っている店のようであった。あれではデパートとは言えないが、Y夫人の息子が東京の三越に勤めているので店の前で記念撮影をした。「ハクセンバウアー」の場所を聞くと先程通って来た所で、店の前の歩道を工事していて足下に気を付けるように言いながら通ったので店の名を見過ごしてしまったらしい。店頭ではぶたの頭や肉の塊を串にさしてぐるぐる回しながら焼いていた。

 店に入ると豚の丸焼きをしている近くの席に案内されたが、臭いが凄いので別の席に換えてもらった。日本語で書かれたメニューはなく、英語のメニューを持ってきたが、メニューを見ても書かれている物がどんな料理でどれくらいの量があるのか分からない。隣の席にドイツ人の若い女性の2人連れがいて注文した料理が運ばれてきた。1人分の肉の塊が凄い、私たちだと3人分くらいの量である。恥ずかしかったが恥は掻き捨てで、その料理はこのメニューでどれか聞きに行った。笑いながらも快く教えてくれたが、この料理だと指差したがよく見るとその料理のハーフ(半分)の量だと書いてある。一皿を2人で食べてもこんな量は私たちは食べきれないのでスライスした少量の別の料理を注文した、最初は美味しかったがそれでも全部食べきれないで残してしまった。隣のドイツ人女性はあの肉の塊と野菜の料理を平らげており、H子さんが言うには「あの2人は骨までしゃぶってきれいに食べていた」と。日本人女性は「太るからダイエットをする」と言って食べたくても少ししか食べないが、ドイツ人女性はダイエットなど考えていないようで凄い量を食べる。ガッチリした大柄の体格になるのはもっともだ。


ヴィクトアリエン市場で


豚肉レストラン「ハクセンバウアー」で
豚肉のスライス(ステーキのように厚い)が3切れ、
ザワークラウト(キャベツの酢漬け)、ポテト

 ローゼンハイマー・プラッツ駅に帰って来て、駅に隣接してあるの地下のスーパーマーケットに入ってみた。どんな物を売っているのか冷やかし半分に行ったが、大型のスーパーマーケットで閉店時間も迫っていてすべて見ることは出来ず、おやつに食べるスナック菓子とチョコレートを買った。大型店なので支払いに T/Cを出したら断られた。クレジットカードも駄目だと言う。カードも使えないのはアメリカより少し遅れているようだ。

 今日計画していた行程は予定通りいった。やれやれ、今日も無事に終わった。ホテルに帰ると部屋の電話機のランプが点滅している。何かメッセージが届いていてレセプションに連絡するようにとの合図だと思った。が電話機のボタンに書いてある文字がすべてドイツ語でレセプションに連絡するにはどうすればよいか、どのボタンを押せば良いのか分からない。またここで文盲であることの不便さを思い知らされる。着ている物も脱いでいたし、レセプションに行くのも面倒だな、明日の朝でもいいかと話していたら、ドアの下から封筒が差し込まれた。開いて見ると西宮のIさんからのファックスだ。ドイツ旅行が予定通り、無事に進行しているかのご機嫌伺いだ。Iさんの許可は得ていないがファックスの全文を載せよう。
******************************

アカイヌ王国 殿

ドイツの旅、楽しんでおられることと思います。

ライン川下りいかがでしたか。ローレライは歌ってくれましたか ?

古城見学、いかがでしたか。高低差があって、かなり歩かなければならなかったんと違いますか。

ドイツの汽車はいかがでしたか。トイレは大丈夫でしたか。

今、日本は、4月14日(月)午後8時です。そちらは正午ですね。

ミュンヘン2日目で、市内を散歩されている頃でしょうね。

昨夜BS11チャンネルでミュンヘンの街を案内してました。市庁舎や教会や広場などが映りました。ミュンヘンってビールとソーセージの街と思ってたのにイギリス公園などがあって美しい街なんですね。それに、環境を大事にしてるなんて。僕達も、行きたくなってきました。

さて、日本では、町の桜は葉ざくらになり、有馬・船坂の桜が今満開です。石原知事候補が308 万票で当選。自民が伸びました。阪神が巨人に2勝1分で今日現在首位です。松井君はヤンキースで大活躍です。

僕も今月からテニススクール復活しました。M代さんは、前歯の1本が抜けそうになり、その歯を隣の歯と糊でくっつけられ、下の歯がそこにさわるので食べにくいと文句をいっております。ドイツに行けない二人は、腹いせにここ一週間ほど毎日桜の花を観に移動しています。今日は有馬。明日は大阪の造幣局かな。

ドイツの旅もあと数日となりました。どうかソーセージを食べ過ぎないように、どうか飲めないビールを飲み過ぎないように、そして毎日快適な便をドイツに落として、元気な姿で日本に帰ってきてください。

  Have a nice trip !

帰国され、疲れを取った後、文字だけのメールで様子を聞かせてください。

(デジカメ写真の添付は避けてください)

                   2003.4.14

******************************

 ファックスが無事届いたというだけでも返事を書きたいが、毎日寝るのが2時頃でゆっくり「絵ハガキ」すら書く時間もない。今日の会計の整理、明日の行動予定のチェックなどをしていると返事を書く時間がない。書いたとしても、明朝出かけるときレセプションにファックスの送付を頼むと日本に届く時間が真夜中で、真夜中に電話のベルが鳴ると迷惑になる。返事を失礼してもまあいいか、と勝手な解釈で失礼することにした。

ドイツ旅行 一口メモ

バスタブ

 ドイツのホテルのバスタブは、ハイデルベルクのクラウン・プラザ・ホテルを除いて日本のホテルのバスタブより幅・長さ共に大きい。

 お湯を入れて中で寝そべると、身長が低い人は足がバスタブの端に届かないで突っ張ることが出来ず顔を含めて身体全体が沈んでしまう。今回同行した女性は4人共溺れそうになった。お湯の入ったバスタブに入るときは、横に付いているパイプをしっかり持ったまま入ろう。